霧ヶ峰の生態系と動植物
霧ヶ峰の生態系と動植物
霧ヶ峰の上部、高原状の起伏のゆるやかな部分(台上とよばれます)は、主に草原・湿原・森林の3つのタイプの植生におおわれています。草原は、火入れや採草によって維持されてきた半自然草原で、本州では最大規模の広がりを残しています。湿原は、八島ヶ原湿原・車山湿原・踊場湿原の3つの天然記念物です。岩が多い場所や急斜面で草の刈り取りに不向きな場所にはミズナラを中心とした小規模な落葉広葉樹林が残されており、樹叢とよばれています。一部にはカラマツの植林地もみられます。
霧ヶ峰の草原や湿原には、絶滅のおそれのある植物が約70種生育しています。そのなかには八島ヶ原湿原に固有のキリガミネヒオウギアヤメ、本州の限られた草原にのみ生育するキリガミネトウヒレンなど固有性の高い植物もふくまれています。これらをふくむ草原性の植物にはユーラシア東北部の温帯草原に生育するものと共通性の高いものが多いため、氷期に大陸から広がってきたものに由来すると考えられています。草原性の鳥類であるノビタキやホオアカ、ヒョウモンチョウ類に代表される草原性の昆虫類も多く生息しています。これらのことから霧ヶ峰は信州(長野県)を代表する生物多様性ホットスポットのひとつとなっています。6月のレンゲツツジ、7月のニッコウキスゲ、8月のマツムシソウなど、霧ヶ峰の草原を彩る花々は多くの訪問客を惹きつけています。一方、近年ではニホンジカの生息数が増えており、花の食害など植生にあたえる影響が問題となっています。